家族が受け継ぐ小さな農園
甘みと果実感が重なる、ふくよかなケニア
Njemu Estate
Philocoffeaにご来店いただき、ありがとうございます。
ケニアのコーヒーのご紹介です。
Njemu Estateは、1998年にアイリーンとサイモン・ニャガ夫妻によって設立されました。ケニア・マウントケニアの麓に位置するこの農園は、わずか3ヘクタール強、年間生産量は約100バッグほどの小さなエステートです。現在の生産量は10年前の3倍以上に増えていますが、Njemuにとって“量”は決して目的ではありません。
彼らが目指してきたのは、“Legacy(受け継がれるもの)”。農園名の「Njemu」は、夫妻の二人の息子、NjeruとMuchiriの名前に由来しています。この土地と農園は、将来彼らに受け継がれる大切な財産として育てられています。
この土地は、もともとサイモンが1960年代に育った場所であり、1980年代に相続した土地でもあります。彼はこの地を守りながら、自身と兄弟姉妹を大学へ進学させました。サイモンは農業経済学の学位を取得し、30年間にわたりコーヒーと紅茶に携わる農学者として活動。現在はその知識と経験を活かし、農園のアグロノミスト(栽培責任者)として品質向上に取り組んでいます。
一方、アイリーンは農園全体のマネジメントを担い、スタッフの管理から樹木のケアまで幅広く統括しています。二人三脚で築き上げられた体制は、すでに高い評価を受けているマウントケニア産コーヒーの中でも、さらにトップレベルの品質を目指す基盤となっています。Njemuエステートの歩みは、家族の未来を見据えながら、高品質なコーヒーを追求し続ける姿勢そのものです。
これまでケニアでは制度的な制約があり、単一の生産者からコーヒーを直接購入することが難しい状況が続いていました。しかし近年、関連する法律が徐々に緩和されたことで、生産者を直接サポートできる取り組みが少しずつ可能になってきています。
今回ご紹介するのは、サイモンファミリーから届いたコーヒー。こちらは中煎りで仕上げました。ケニアのコーヒーといえば、浅煎りでいきいきとした酸味を楽しむスタイルも魅力ですが、中煎りから深煎りにすることで、焙煎由来の甘さや苦味とともに広がる複雑な味わいもまた魅力的だと感じています。焙煎では、前半はゆったりと熱を入れながら豆の内部までしっかりと火を通し、後半にかけて徐々に火力を調整することで、ふくよかな甘みのある中煎りに仕上げました。
挽いた瞬間、焼き栗を思わせるやさしい甘い香りが広がります。淹れたてはキャラメルやブラックカラントのような味わい。焙煎由来の香ばしさと、ケニアらしい果実感が重なり合い、深みのある印象のカップに仕上がっています。冷めてくると、ドライオレンジやアーモンドを思わせる少し明るいニュアンスへと変化。後味にはほんのりハーバルな余韻も感じられ、どこかワイルドな印象もあります。丸みを帯びた質感が、最初の一口から飲み終わりまで心地よく続く一杯です。
ちょうどこの文章を書きながら、プラッツ習志野店でこのケニアを使ったカフェラテを飲んでいるのですが、これがとても美味しいんです。キャラメルのようなたっぷりとした甘さに、ほんのりカシスを思わせる余韻。味わいにはしっかりボリュームがありながら、バランスがよく、思わずすいすい飲み進めてしまうような一杯です。ぜひミルクと合わせてもお楽しみください。