受け継がれる挑戦から生まれた、新たな品種
CGLE Las Margaritas
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コロンビアのコーヒーのご紹介です。
今回ご紹介するLas Margaritas農園は、「Cafe Granja La Esperanza(CGLE)」が運営する4つの農園の一つです。なんとなくCGLEという文字をコーヒーショップで見かけことのある方もいらっしゃるはず...コロンビアを代表する生産者グループの一つです。標高1,570から1,850mに広がる33.8haの農園には13の区画が設けられ、それぞれのマイクロクライメイトを活かしながら、GeishaをはじめSudan RumeやSidra、Laurinaなど数多くの希少品種が栽培されています。CGLEが長年培ってきた品種選定や精製技術を支える、重要な農園の一つです。
Las Margaritasのあるバジェ・デル・カウカ県は、コロンビア南西部ポパヤンで知られるカウカ県に隣接するエリアです。アンデス山脈の標高1,400から2,000mに広がるこの地域は、昼夜の寒暖差が大きく、温暖で湿潤な気候に恵まれています。こうした環境に加え、多様な品種の栽培と精密な精製技術が組み合わさることで、世界中から高く評価されるコーヒーが生み出されています。また、県内にはコロンビア有数の輸出港であるブエナベントゥラ港を擁し、国内のコーヒー輸出を支える重要な地域でもあります。
この地で長い歴史を築いてきたのが、「Cafa Granja La Esperanza(CGLE)」です。その始まりは1945年。フアン・アントニオ氏とブランカ・リギア氏がポトシ農園の運営を担い、当時主流だったティピカに加え、イエローブルボンやレッドブルボン、カトゥーラなど新たな品種を積極的に導入しました。14人の子どもたちとともに家族総出で農園を発展させ、その挑戦の精神は現在まで受け継がれています。
その後、息子であるリゴベルト氏とルイス氏が農園経営を引き継ぎ、生産性だけでなく品質向上にも力を注ぐようになります。新たにトルヒージョ地区に「ラス・エスペランサ農園」を開設し、有機農法や精製技術の研究を進めました。
CGLEの歴史を大きく変えたのは2008年でした。リゴベルト氏は2007年にパナマ・ボケテ地区のラ・カーレイダ農園の運営を任され、翌年の「Best of Panama」で優勝を果たします。この経験を通じてゲイシャ品種の可能性を確信し、その種子をコロンビアへ持ち帰りました。この挑戦は、コロンビアにおけるゲイシャ栽培の先駆けとなり、CGLEを世界有数のスペシャルティコーヒー生産者へと押し上げる大きな転機となりました。
現在CGLEは、Potosi、La Esperanza、Las Margaritas、Cerro Azul(近年はHawaiiも加わる)など複数の自社農園を運営するほか、コロンビア各地の生産者と連携したRegional Programを展開し、高品質なコーヒーづくりを支えています。その中でもLas Margaritas農園では、品質を最優先に考えた栽培と精製が行われています。収穫したチェリーはフローター、電子選別、ハンドピックによる三段階の選別を経て、ロットごとに最適な発酵管理を実施。品種ごとの個性を最大限に引き出すため、細部まで徹底した品質管理が行われています。
今回ご紹介するコーヒーの品種は「CGLE-17」。名前の通り、CGLEが独自に開発したオリジナル品種です。開発の目的は、コーヒーさび病への耐性を高めること、そして乾季にも安定して育つ樹をつくることでした。2011年、ポトシ農園で育てられていたCaturraから優れた個体を選抜し、Geishaとの交配を開始。2014年に定植され、3年後に初めて収穫を迎えます。
しかし、初めてのカップ評価は決して理想的なものではありませんでした。複雑さに欠け、品質面ではまだ改良の余地が残されていたのです。それでも開発チームは味だけではなく、樹勢や収量、病害への耐性といった将来性にも着目し、研究を継続しました。その後、Cerro Azul農園で選抜されたGeishaを用いてさらに交配を重ね、現在のCGLE-17が誕生します。
2017年には、ポトシ農園内でも最も標高の高い1,890mの区画へ最初のCGLE-17が植えられました。わずか0.25ha、642本の木から始まったこの品種は、CGLEが未来のコーヒーづくりに挑み続ける姿勢を象徴する存在でもあります。
プロセスはアナエロビックナチュラルプロセス。厳選された完熟チェリーのみを使用し、まず48時間の酸化工程(Oxidation)を行います。この工程では、チェリーに付着する野生酵母や微生物の働きを促し、果実由来の香りや複雑なフレーバーの形成を促します。
その後、チェリーを密閉タンクへ移し、24時間のアナエロビック(嫌気性)発酵を実施。酸素を遮断した環境で発酵を進めることで、華やかなフローラルな香りと凝縮感のある果実味、そして幾層にも重なる甘さを引き出しています。
発酵後は、38℃に管理された機械式サイロで8日から12日間かけてゆっくりと乾燥させます。乾燥を一定条件で管理することで品質の均一性を高め、コーヒー本来の複雑な風味を保ちながら安定した品質へと仕上げています。乾燥後は18℃から19℃に保たれた定温倉庫で熟成され、焙煎に最適な状態になるまで丁寧に保管されます。
世界的な評価を受ける農園でありながら、CGLEは現状に満足することなく、新しい品種の育成や精製技術の探究を続けています。この一杯には、80年以上にわたり受け継がれてきた挑戦の歴史と、「より良いコーヒーを未来へつなげたい」という彼らの哲学が詰まっています。
すみません...農園情報だけで結構な文章量になってしまいました笑。伝えたい魅力がたくさんある農園ですね。焙煎についても少しだけ。
CGLE-17は今回初めて焙煎する品種でしたが、生豆はゲイシャ種を思わせる細長い形状をしていたため、その個性をイメージしながら焙煎を組み立てました。
実際に焙煎してみると水分値が高く、熱をしっかりと吸収していく印象があります。そのため前半は十分にエネルギーを与えて水分を抜きつつ、メイラード反応では火力を細かく調整しながら、華やかな香りと複雑な甘さの両方を残せるよう意識しました。焙煎中も果物を思わせる鮮やかな香りが立ち上り、このコーヒーのポテンシャルを強く感じさせてくれました。CGLEが長年の研究の末に生み出した品種らしい、華やかさと奥行きを兼ね備えた一杯に仕上がっています。
パッキングルームでこのコーヒーを袋詰めしていると、部屋中にベリーを思わせる華やかな香りが広がります。その場にいたスタッフからも思わず「いい匂い……」という声が漏れるほど。袋を開けた瞬間から、このコーヒーの存在感を感じていただけると思います。口に含むと、クランベリーやラズベリー、レッドチェリーを思わせる赤い果実の風味がジューシーに広がります。続いてフローラルなアロマと、ライムやピンクグレープフルーツのような明るい柑橘のニュアンス。余韻にはカカオや洋酒を思わせる深みのある甘い香りがゆっくりと続きます。
抽出の仕方によって表情が変わるのも、このコーヒーの魅力です。粗挽きでは果実感と明るい酸が際立ち、少し細かく挽くと丸みのある質感と甘さがより豊かに感じられます。透明感のある味わいの中に複雑な表情を秘めた一杯だからこそ、その日の気分や抽出によって、印象が少しずつ変化していきます。ぜひ、その日だけの味わいとの出会いも楽しんでいただけたら嬉しいです。