伝統と革新が交差する、FRUITYロット
Fazenda Guariroba
Philocoffeaにご来店いただき、ありがとうございます。
ブラジルのコーヒーのご紹介です。
そのユニークな味わいからファンも多い、グアリロバ農園のコーヒーが今年も届きました。グアリロバ農園の歴史は19世紀、Joao Ferreira Carneiro氏からはじまり、現在5代目のHomero Aguiar Paiva氏にそのコーヒーに対する熱意と伝統が受け継がれています。スペシャルティコーヒーの生産に特化し、近年では、新しい精製方法や栽培技術の開発に積極的に取り組んでいます。2016年のCOE(生豆の国際品評会)で優勝、2018年には、Brazil Pulped Naturalsで8位、2019年のCOEではNational Winnerを受賞など、ブラジルの優良農園です。
昨年も購入したFRUITYロット。今年はタンクでの発酵ではなく、パティオ上でチェリーを山積みにし、シートで覆う方法で発酵が行われました。
酸素量をコントロールすることで、チェリーに元々付着している自然由来の酵母や乳酸菌が穏やかに活性化し、緩やかな嫌気性発酵が進行します。発酵中は内部温度を細かくモニタリングしながら、過発酵を防ぎつつ、風味の明瞭さと甘みを丁寧に引き出していきます。
発酵後は、アフリカンベッドで約40日間のスロー・シェイド・ドライ。直射日光を避けながらゆっくりと乾燥させることで、豆へのストレスを抑えつつ水分を均一に抜き、発酵によって生まれた香味を内部までしっかりと定着させていきます。
ちなみに今回、なぜ昨年のようなタンク発酵(バイオリアクター)ではなく、この方法が採用されたのかも確認しました。タンク発酵は、選別・培養した微生物を用い、密閉環境で管理することで再現性の高い発酵を実現できる手法です。一方で今回のプロセスは、その対極ともいえるアプローチ。チェリーに付着している自然の微生物をそのまま活かし、環境の中で起こる変化を受け入れながら風味をつくっていきます。
発酵初期にはさまざまな微生物が活動を始めますが、上からシートをかけて酸素を制限することで環境は徐々に嫌気性へと移行し、最終的にはその中で選ばれた微生物たちが、ミューシレージの糖分を分解しながら複雑な香味を生み出していきます。もちろんこの方法はコントロールが難しく、一歩間違えればネガティブな発酵に傾くリスクもあります。だからこそ、温度管理や乾燥工程の精度が非常に重要になります。
自然の力をそのまま活かしながら、ギリギリのバランスで引き出されたフレーバー。
人のコントロールと自然の働きが重なり合うことで生まれる、このロットならではの繊細さと奥行きが大きな魅力です。
昨年のカッピング会で飲んだ印象は、以前より穏やかになりつつも、グアリロバらしさはしっかりと健在。シトラスフルーツの甘さに、ほんのりスパイスを感じる味わいが、「今年もグアリロバの季節が来た」と教えてくれます。焙煎では、まず焦げを防ぐために前半をゆっくり進めてみたところ、ややナッティーな印象が強く出ました。そこからもう少しグアリロバらしい明るさを引き出したいと考え、焙煎時間をやや短く調整し、よりブライトな印象に仕上げています。
柑橘系の爽やかな甘さに、どこか山椒を思わせるスパイス感。後味にかけては、ベリーやシナモンのような香りも重なります。全体としては、ブラジルらしいナッツのようなやさしい甘さが感じられ、個性的なフレーバーをやわらかく包み込んでいます。一見するとパンチのある味わいに感じられますが、飲み進めるうちにその印象はほどけ、気づけば飲み終えてしまうような、どこかクセになる一杯です。これからの季節には、アイスコーヒーにしてすっきりと楽しむのもおすすめです。