訪れて感じた、"丁寧"という農園の空気
Bambito Estate
Philocoffeaにご来店いただき、ありがとうございます。パナマのコーヒーのご紹介です。
今回ご紹介するBambito Estateは、1945年に設立された農園です。創業以来、「より良いコーヒーをつくること」を何よりも大切にしながら、約80年にわたり家族の手で受け継がれてきました。現在では4代目、5代目へとその想いが引き継がれ、パナマを代表するスペシャルティコーヒー農園のひとつとして高い評価を受けています。
農園があるのは、パナマ・チリキ県バンビート。標高1,660-1,850mの冷涼な山岳地帯で、二つの国立森林公園に囲まれた自然豊かな場所です。農園の中央には一本の尾根が走っており、その地形によって一つの農園の中に二つの異なるマイクロクライメイトが生まれています。さらに、この尾根は夏に吹く北風からコーヒーの木を守る役割も果たしており、ゆっくりと実を熟させることで、複雑な甘さと美しい酸味を育んでいます。自然そのものが、この農園にとって最高の設備なのだと感じさせられます。
Bambito Estateでは、高品質なコーヒーづくりと自然環境を守ることは、切り離せないものとして考えられています。収穫されたチェリーは果肉とミューシレージを取り除いた後、天日乾燥を中心に仕上げられ、理想的な水分値まで丁寧に乾燥されます。精製で生まれたコーヒーチェリーの果肉は廃棄されることなく、有機肥料へ。数か月かけてゆっくりと堆肥化された肥料は、再びコーヒーの木へ戻され、豊かな土壌を育てていきます。また、農園には温室やカッピングルームも併設されており、苗木の育成から品質管理まで、自分たちの手で丁寧に行っています。一つひとつを積み重ねる姿勢こそが、毎年安定して美味しいコーヒーを生み出している理由なのだと思います。
Bambito Estateが大切にしているのは、コーヒーだけではありません。収穫期には多くの地元の家族が農園で働き、地域とともにコーヒーづくりを支えています。また、近隣の小学校へ朝食を提供する活動や、毎年クリスマスに地域住民を招いて交流会を開くなど、コミュニティとのつながりも大切にしています。「美味しいコーヒーは、豊かな自然と、そこで暮らす人たちによって育まれる。」そんな考え方が、この農園には自然と根付いているように感じます。
こちらのコーヒーも、今年3月に粕谷がパナマを訪れた際に購入を決めたロットです。今回は農園ではなく、プロセス施設の見学とカッピングをさせていただきました。そこで一番印象に残ったのは、「実直で、とても丁寧な農園だな」ということ。最新設備が並ぶ大きな施設というよりは、どこか家族の歴史を感じさせる温かみのある建物。決して派手ではありませんが、施設の隅々まできれいに手入れがされていて、「ここなら美味しいコーヒーが生まれるだろうな」と自然に思える空気が流れていました。
特に印象的だったのは、温度管理された部屋へ出入りする際の様子です。農園の皆さんは、冷気を逃がさないように素早く扉を閉めることを当たり前のように徹底していました。ほんの些細なことかもしれません。でも、その小さな積み重ねこそが品質につながることを知っているからこその行動なのだと思います。
「より良いコーヒーを届けたい。」
そんな気持ちが、ひとつひとつの行動から伝わってくる農園でした。
見学のあとに行ったカッピングでも、その印象は変わりません。
どのコーヒーも驚くほどクリーンで、それぞれの品種の個性が素直に表現されています。ただ綺麗なだけではなく、豊かなフレーバーがあり、その土地の持つ力強さまで感じられるような味わいでした。派手さはありません。でも、一杯飲むと「丁寧につくられたコーヒーなんだな」と自然に伝わってくる。Bambito Estateは、そんな誠実な魅力を持った農園だと感じています。
Bambito Estateのカッピングルームで出会ったこちらのコーヒー。ベリーやドライフルーツ、トロピカルフルーツを思わせる鮮やかな果実感。カッピングをしている最中、思わず「美味しいな」とつぶやいてしまうような、Bambito Estateの魅力がぎゅっと詰まったコーヒーです。焙煎は、そんな鮮やかな果実感をしっかりと引き出せるよう、浅煎りに仕上げています。最初は731のWashedと同じように、少し時間をかけながら綺麗な味わいに仕上げようとしました。もちろんそれも美味しかったのですが、飲んでみるとどこか少し物足りない。「産地で飲んだときは、もっと果実の鮮やかさがあったな」と思い、そこから焙煎を調整しました。前半の熱量を少し増やすことで、このコーヒーが持っている明るい果実感をより前に出しています。
焙煎から2週間から3週間ほどエイジングをとることで、より綺麗な酸味と後味をお楽しみいただけます。温かいうちは、レッドチェリーのような赤い果実感に、パパイヤを思わせるトロピカルなニュアンス。温度が下がるにつれて、りんごの蜜やレーズン、ヘーゼルナッツのような、しっとりとした甘さへと変化していきます。浅煎りながら、液体にはほどよい重みと粘性があり、つるんと滑らかな口当たりもこのコーヒーの魅力です。
Washedの澄んだ綺麗さとはまた違う、Naturalらしい鮮やかな果実感と甘さを楽しめるBambito Estate。同じ農園だからこそ感じられる共通点と、それぞれの個性があります。ぜひ2つを飲み比べながら、Bambito Estateのさまざまな表情を楽しんでいただけたら嬉しいです。