環境を越えて届いた、この一杯。
透明感と立体感が広がる、ゲイシャ種。
Finca La Estrella
Philocoffeaにご来店いただき、ありがとうございます。
コロンビアのコーヒーのご紹介です。
コロンビア南部ナリーニョ県タミナンゴのパノヤ地区、標高1850mに位置するFinca La Estrellaでは、生産者Juan Sanchezさんが、代々受け継がれてきた農業の知恵と現代的な精製技術を融合させながらコーヒーづくりに取り組んでいます。冷涼な気候と火山性土壌に恵まれたこの土地は、昼夜の寒暖差が大きいためチェリーがゆっくりと成熟し、豊かな酸味と甘さを育む理想的な条件を備えており、タミナンゴ周辺では伝統的な農法を守りつつも、新しい精製方法を取り入れる意欲的な生産者たちが品質向上を推し進めています。そうした環境で生まれたこのゲイシャ種は、ウォッシュト精製と14時間の好気性発酵によって品種本来の透明感と立体感を引き出し、フローラルで華やかなアロマや柑橘系の爽やかな酸、そして余韻に残る心地よい甘さが調和した、上品で洗練された味わいを実現しています。
haiz coffeeがこのロットを買付けた2025年6月から7月にかけては、ナリーニョの地域社会全体が不安定な状況に直面していました。来年に控えた選挙の影響などから治安が悪化し、夕方5時から朝5時まで住民にも外出規制がかかるほど。生産者から「危険だから来ないでほしい」と伝えられ、農園訪問を断念せざるを得ない状況だったそうです。そうした現実を目の当たりにすると、この一杯のコーヒーが持つ価値は単なる風味や香りだけではなく、生産者が日々の暮らしの中で直面する困難を乗り越えながら届けてくれるものだという実感を強く抱かされますね。現地に足を運べなかった悔しさと同時に、Juan Sanchezさんや地域の人々がこうした状況の中でも高い品質を追求し続けていることへの尊敬の念が、このロットへの特別な思い入れとなっているそうです。(カッピング会の時にも、実際に農園を訪れたかったけど、それが叶わなかったことを悔しそうに話されていたのが印象的でした。)
前回リリースした296 Colombia La Roca Geishaが、大人気であっという間の完売でした。こちらの Colombia Finca La Estrella Geisha Washedも似たような味わいがあり、お手頃だけど美味しいゲイシャ種なので、人気が出るんじゃないかなと予想しています。
こちらは焙煎所を移転してから調整を行なったコーヒーです。今までと環境がガラッと変わって、なかなかハードな2週間でした...。ただ、今までよりも火力の調整の幅が広がった印象があるので、より微調整しやすくなったのは嬉しいです!今回のゲイシャ種も素材の良さをそのままいかしたいと思い、短時間で仕上げました。投入量を少し増やして、豆同士の蓄熱を使いながらクリーンに仕上げています。
みかんやアプリコットのようなジューシーな味わい。コロンビアらしい少しハーバルな余韻も感じられます。蜂蜜のような甘さが全体をサポートしており、冷めてきてもバランスよく楽しめる一杯です。(私だけかもしれませんが、冷めると少し三ツ矢サイダーみたいな爽やかな甘い味わいが感じられます。)するんとした質感と、じんわりと続く甘い余韻もゆっくりとお楽しみください。
環境や距離を越えて届けられたこの一杯には、土地の力強さと、生産者の誠実な仕事が静かに重なっています。飲み進めるほどに虜になる、綺麗な酸味とやさしい甘さ。余韻までじっくりと味わってみてください。